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続・U設計室web diary

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2013年 12月 20日

愛を強いる支配 

昨日の朝日新聞朝刊の論壇時評で
作家 高橋源一郎が興味深い事を書いていたので
一部抜粋してここに掲載します
ちょっと長いですが興味のある方、読んでみてください

「愛を強いる支配 ここはDV国家なのか」
 ある若者が、デモに行くという友人と、その後映画を見ようと約束した。
その若者が、友人が混じったデモ隊の列と並んで歩道を歩いていた時、
突然、私服警官に逮捕された。理由は公然執行妨害だったが、若者にはまったく
覚えがなかった。後に若者は検察官から「きみが威圧的な態度をとり、警官は
恐怖を感じたからだ」といわれた。そういえば、私服警官らしい人間と目があった
ことは思い出したが、それが公務執行妨害にあたるとは夢にも思わなかった。



 留置場に入った若者は、そこで、1年近く裁判も始まらずただ留め
置かれているという窃盗犯に出会った。貧困から何度も窃盗を繰り返した男は
1件ずつゆっくり起訴されていた。警察・検察の裁量によって裁判が始まる前に、
実質的な刑罰の執行が行われていたのだ。
 「それって、人権侵害じゃないの」と若者がいうと「わからない。法律なんか
読んだことがない」と男はいった。若者と男の会話を聞いた看守が、房の外から
バケツで2人に水をかけた。
 「うるさい黙れ、犯罪者に人権なんかないんだ」
 極寒の房内は室温が氷点下にまで下がっていた。濡れた体を震わせながら、
若者は、犯罪者の人権が軽んじられる国では、人権そのものが軽んじられるだろうと
考えていた。それは、本や理論で学んだ考えではなく、経験が彼に教えたものだった。
その若者が半世紀近くたって、今この論壇時評を書いている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 秘密の内容や罰則規定について拡大解釈が危惧されている「特定秘密保護法」
が、強い反対の下、可決・成立した。この法律の問題点については、多くの
メディアが詳細に論じている。たとえば、秘密情報の専門家として佐藤優は、
特定秘密に該当する情報は国民のものではなく官僚のものになると、警告し
外岡秀俊は秘密保全に関する法の歴史をたどり直す。
(中略)
わたしは、平田オリザのこんなことばに強い印象を受けた。
「最近、わたしは大阪のある行政職員から封書をいただきました。なぜ封書かというと
大阪の職員は、メールは検閲される可能性があると、萎縮してしまっているのです。
・・・この嫌な感じは,東京にいるとわからないと思います。(特定秘密保護法の成立とは)
それが国政で当たり前になるということです」
(中略)
 誤解を恐れずにいうなら、わたしには、この国の政治が、パートナーに暴力をふるう
いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)の加害者に酷似しつつあるように思える。
彼らは、パートナーを「力」で支配し、経済的な自立を邪魔し、それにもかかわらず
自らを「愛する」ように命令するのである。
(中略)
 わたしは、いま毎日、「特定秘密法」の全文と、「国家安全保障と情報の権利に関する
国際原則」(通称ツワネ原則)の(膨大な)英和対訳全文を持ち歩き、しょっちゅう読んでいる。
妙な言い方だが、とても面白い。
 前者で特徴的なのは、そこで使われている日本語が奇妙であることだ。
いわゆる法律用語で書かれた文章のいくつかはまったく意味がわからない。
 詳しい人たちの話を聞くと、通常の日本語では考えられない意味になったりするらしい。
日本語でないとしたら、それは何語なのだろう。ほとんどの日本人に意味がとれないことば
で書かれた「重要」法案とは何なんだろう。
 一方、国家の安全保障と情報の権利に関して、長い討議の果てにできた「ツワネ原則」は
全ての人間に「公権力が保有する情報」にアクセスする権利があることを、民主主義の根幹で
あるとしていて、知る権利の価値を軽んじる「特定秘密保護法」と鋭く対立する。だが、わたしが
もっとも感銘を受けたのは、「わかる」ことだ。およそ、ことばを理解することができる者なら
誰でも判るように「原則」は書かれている。「ツワネ原則」(の文章)は読むものすべての心を
明るく,励ます。
 DV被害者へのアドバイスの多くは、こんな一分で終わっている。私がいま書くべきことは、
実はそれと同じなのかもしれない。
 ・・・・・自分を責めてはならない。明るく,前向きな気持ちでいることだけが、この状況から
抜け出す力を与えてくれるのである。
 (2013年12月19日 朝日新聞朝刊 論壇時評)

日弁連による「ツワネ原則」の全文日本語訳
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131115.html 

by u-och | 2013-12-20 14:29 | Book | Trackback | Comments(0)
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